知識と様式

人は他人と情報をやりとりするとき、まずは言葉を使う。言葉が表しているものが必ずしも現実の対象と一対一に対応しているわけではないし、二人の間でも同じ単語で同じものを想起しているとは限らない。それでも、とりあえずは言葉によって二人の間で情報のやりとりが行われる。


ネットの世界でも情報の流通は言葉によって行われる。ニュースや掲示板、ブログ、すべては言葉でコミュニケーションを行っている。しかし、実は言葉だけでは情報を伝える手法としては効率的とは言えない。言葉を載せる様式、構造も含めて、はじめて効率的なコミュニケーションが成り立つのである。代表的な様式の例として、段落分けされていない文書が読みづらいことが挙げられるだろう。様式が必要なのは情報の受け側だけではない。伝える側にとっても様式を利用することで、伝えるための労力を軽減することができる。


ネット上で様式が有効利用されている場所の代表例はWikipediaだろう。Wikipediaは名前(エントリ)に対するその詳細という知識表現の様式を与えた。この様式は、人が何かを調べるとき、その名前によって検索するというやり方にマッチしている。記事を書いている人は違うはずなのに、(日本語版Wikipediaを見ている限りでは)記述の様式まで統一されていて興味深い。


Yahoo知恵袋のようなQ&Aサイトも様式を活用しているといえるだろう。質問とそれに対する回答という基本的な様式を設定することによって、知識のやりとりを円滑に行えるようにしている。


目的に応じた最適な様式を用意することによって、ネット上の情報のやりとりは活性化される。知識流通ということに限れば、百科事典型、Q&A型という代表的な手法が構築されている。それらの間をとるような知識流通の方法ってないだろうか。