How to Write a Lot

How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing (LifeTools: Books for the General Public)

How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing (LifeTools: Books for the General Public)

一般的な理系の学生なら,初めてまとまった量の文書を書くのは卒業研究のときじゃないだろうか.そして,その過程で文書を書いては直されてを繰り返して,書くことの難しさを肌で学ぶ.僕もそんな感じだったし,今でも文章を書くことは気の進まない,困難なタスクの一つである.いつも気が重いし,なかなか自分の思うようには書けない.



この本は,文書を書くことに対して苦手意識を持っている人に,どうすれば沢山文書が書けるようになるかを示す本である.「理科系の作文技術」,「The Elements of Style」などと同じ類の本であるということができるが,一点違うのは,この本がいかによい文書を書くかではなく,いかにして苦しい思いをせずに沢山文書をかけるようになるかを扱っていることだ.


一般的な作文技術の本は,書き手が文書を苦もなく書けることを前提として,そのうえでどのような点に気をつければ良い文書になるかについて述べている.一方,この本は「文書を書くことは難しい」ことを認めることから始まり,次に,書き物をする時間がないなどの物書きが進まない理由(として普通の人があげるもの)をいくつか取り上げ,それを克服して,ルーチンワークとして大量の文書を書けるようになる手法について述べている.


本で紹介している沢山書くための手法は至ってシンプルだ.毎日,書き物にあてる時間を例えば一日2時間と決めて,その時間になったら,あらかじめ決めたスケジュールにしたがってひたすら書く.それだけだ.筆者の場合,平日の朝8時〜10時を物書きの時間にあてている.そして,スケジュールを固守できるように,日々の取り組みを記録する,自分と同じように物書きに従事する人とグループを作って,互いに進捗のチェックを行うなどをやっているそうだ.


一通り読んで,僕ははじめて自分が必要としているものがわかったような気がした.僕はなにも素晴らしい文書を書けるようになりたかったわけではなく,ただ文書を書くときのあの苦しさを和らげたかっただけなんだと思う.作文に苦手意識をもっている多くの人も,同じような苦しさを感じているのではないだろうか.そして,この本の方法はその苦しさに対する有効な処方箋になると思う.


英語だが,それほど難しい表現はないし,主張も明快で読みやすい.まとまった量の文書を書く必要がある人で,物書きに苦手意識を感じている人は,一度手にしてみてはどうだろうか.


そのほか,印象に残った部分を列挙.

  • あなたが苦しんでいるように,あなたの論文をチェックしている大学の先生も作文に苦しんでいる.みんな正しい文書の書き方を学んだことがない.
  • 多く書くためにはスケジュールを守ればよいが,良い文章をかけるようになるには時間がかかる.
  • よい文書を書くためには,書くことと修正することを同時にやってはいけない.まず書いて,その後に修正しよう.
  • 論文を書くときには,まずはアウトラインを作ろう.何を書くべきかをわかっていない状態でかくことはできない.
  • 物書きは平日の決まった時間にやろう.週末は家族,友達,ペットのために使おう.