iPhone は iPod にあらず

iPhoneiPod touchを比べてみると音楽再生アプリの名前が違うことが分かる。iPod touchでは「Music」なのに対して、iPhoneでは「iPod」となっている。これは、iPod touchiPhoneとが別物であることを表しているのだと思う。アプリとしてiPod機能を備えているが、それは他の雑多なアプリと同様の一機能でしかない。


iPodは「Pod」、つまり容器だ。大容量の容器の中に好きな音楽をドカドカと詰め込んで持ち運ぶことができる大きなバケツだ。iPodの出現によって、ユーザは外出前に今日何を聞くかについて悩まなくてもよくなった。


では、iPhoneは何かというと、やはり「phone」、電話だ。ここでいう電話というのは通信を行うために作られたデバイスとのことだ。iPhoneiPod touchの一番の違いは、それが通信することを前提としたものであるということだろう。通信できることが前提となると、デバイスのローカルストレージにデータを蓄積する必要がなくなる。flickrなどのWebアプリを利用すれば、iPhoneで撮った写真をその場でアップロードしてローカルには何も残さないということが既に可能になっている。こうなってくると、ローカルにデータを蓄積することが不自然なことのように思えてくる。iPhoneを利用した人なら、iTunesWifi経由で利用できないことに不便を感じたことがあるのではないだろうか。


便利だった、iPod式の「とにかく必要そうなものをすべて持ち歩く」方式は、iPhone式の「必要なものは必要になったときにネットワーク経由で手に入れる」方式の前では色褪せてしまう。それを強く感じる。


iPhoneiPodにあらず。ネットワークを使ってメディアを入手する仕組みがさらに発達すれば、iPhoneの大容量ローカルストレージは必要なくなるだろう。もっとも、当分はPCの仮想メモリのような補助的な媒体として存在し続けるだろうけど。